インプラント治療は医療費控除の対象|申請方法・ポイントも解説!
インプラント治療は、歯科治療で行っている治療のなかでも高額なものもあり、迷っている人もいるのではないでしょうか。意外と知られていないのですがインプラント治療は、医療費控除の対象になり還付金を受け取れる可能性があります。インプラント治療の医療費控除のために、覚えておきたいポイントも含め詳しく説明していきたいと思います。また、医療費控除ならではの注意点もあるからこそ、しっかりと確認しておくのをおすすめします。
もくじ
インプラント治療は医療費控除の対象!
インプラントとは、失った歯に金属製の歯根を埋め込んで、人工の歯を装着する治療方法をいいます。ちなみに、インプラントとは歯科治療ではなく、体内に埋め込む医療器具や材料のことです。
審美性に優れており、咀嚼力も高く自分の歯のように楽しめます。天然歯のような自然な見た目や噛み心地があることから「第二の永久歯」と呼ばれることもあります。安心してインプラント治療を受けるためには、歯科医の知識・技術はもちろん十分なインフォームドコンセントを行い治療を進める必要があります。
検査や診察料 | 1.5万円~ |
手術費用 | 15万円~35万円 |
人工歯の費用 | 5万円~ |
通院費 | 数千円~ |
インプラント治療の医療費控除は、上記の費用項目すべてが対象となります。医療費控除は1年間に支払った医療費が10万円を超えた場合が対象となります。ただし、健康保険から支払われる高額医療費があるときは、総医療費から差し引く必要が出てきます。
そもそも医療費控除とは?
医療費控除とは、所得控除の一つになり所得税や住民税の控除が受けられる制度になります。
医療費控除を利用する条件として、1年間(1月1日〜12月31日に支払った医療費の合計額(10万円)を超えたときに、所得控除の対象となるものです。
医療費控除は、納税者であり、本人や家族・配偶者などの生計をともにしている親族に対して支払った医療費を合計したものが対象となります。歯科の場合は、一般的に使用される治療材料を使って治療を受けたものであり、現金でもクレジットカードで支払った場合も医療費控除の対象となります。
インプラントは、審美目的の治療ではないと見なされることもあり医療費控除の対象となります。主に対象となるのは「インプラント治療費」「通院費」です。ただし、通院費は公共交通機関のみ対象となり、自家用車で通院している場合の駐車場やガソリン代は対象外となります。また、歯医者までの付き添いの人にかかる通信費も対象外になるなど、制限もあります。
インプラント治療は何度も歯科医院に足を運ぶことになるため、通院費の負担も大きくなります。切符を購入している人は日付や行き先を記録しておくと申請のときにも便利に使えます。ICカードを使用しているときは、事前に券売機にて利用履歴を印刷しておくのをおすすめします。
(出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm)
インプラント治療における医療費控除の計算方法
インプラント治療における、医療費控除の計算方法について説明します。
医療費控除対象額を求める計算式
医療費控除対象額(上限200万円)=医療費の総額-補填金-10万円※保険金・給付金が補填されることはほとんどない |
控除額・還付金を求める計算式
還付金=医療費控除額×所得税率 |
所得税額の一覧は以下の通りです。
所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
195万円以上、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円以上、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円以上、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円以上、1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
195万円より下の所得 | 5% | 0円 |
(出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm)
医療費控除を行うことで、課税対象となる所得が少なくなるため、対象となる所得金額に応じて翌年の住民税も減額されます。住民税は、所得によって決まる「所得割」と、所得に関係なく定額の負担を求める「均等割があります。
住民税=医療費総額-保険金など受け取った金額-10万円×住民税率◯% |
医療費控除を受けた場合の還付金の額はどれくらい?
年収400万円の人が、インプラント治療を受けて医療費控除を受けた場合の還付金の計算方法です。
控除額の計算 | 50万円(インプラント治療費)-10万円=40万円(控除額) |
還付金の計算 | 40万円×20%=8万円 |
所得合計金額が一緒で、医療費が増えると控除額も自動で増えることになるので還付金も増える計算です。
保険金や給付金の金額を差し引く計算式にはなっていますが、特殊な場合以外では基本的にインプラント治療における保険金や給付金は支払われない計算になります。
インプラント治療における医療費控除の申告・申請方法
インプラント治療で医療費控除を行う場合の申告や申請方法について詳しく説明します。
申告に必要となる書類
インプラント治療で医療費控除を受けるときに、必要となる書類は以下の通りです。
・歯科医院で治療を受けたときにもらった領収書
・医療費控除の明細書
・保険組合から送られてくる医療費控除のお知らせ
・通院で使用した公共交通機関の領収書
保管も、給与所得者の場合は「源泉徴収」を用意する必要があります。
医療費控除の明細書は、国税庁のHPからダウンロードすることもできますし、税務署の窓口で入手する方法もあります。また、自由診療のインプラントの場合は医療費通知に記載されなくなってしまうので、領収書を保管しておき、なくすことのないように注意してください。医療費の領収書は自宅で5年間保存する必要もあり、税務署から提出を求められたときは提出する義務があります。
申告・申請場所
医療費控除の申告は、お住まいの地域を管轄している税務署に提出することになります。窓口に直接持ち込んでもいいですし、郵送での提出方法やネット(e-Tax)での電子申請にも対応しています。必要書類を不備なく準備しておき、手続きを行うようにしてください。不備があると手続きのやり直しになってしまい、手間がかかることになります。ネット(e-Tax)とは、国税に関する手続きがオンラインでできるシステムのことをいい、電子の確定申告書を作成してデータをアップロードするだけで提出できます。税務署に足を運ぶ必要がないので、時間がない忙しい人にとってもおすすめです。窓口でも郵送でもネット(e-Tax)でも使いやすい方法を選ぶようにしてください。
申請書類の提出期限
医療費控除の申請は、毎年2月16日~3月15日までです。インプラント治療を行った分の医療費控除の申請を行うためには、治療費が発生した翌年の3月15日までに必要書類をそろえ申告する必要があります。また、確定申告の必要がなく医療費控除のみを申請するときは、決まった期限がなく一年中申請できます。また、遡って(5年以内)医療費控除の申請を行うことができるので、インプラント治療費以外にも一緒に申請できる医療費控除がないか確認したうえで申告するようにしてください。
インプラント治療の医療費控除でおさえておくべきポイント
これからインプラント治療の医療費控除を受けようと考えている人向けに、おさえておくべきポイントを3つ紹介したいと思います。
「治療を受けた日」ではなく「治療費の支払日」が基準となる
インプラント治療の医療費控除は、治療を受けてから実際に費用を支払った日が基準となり算定されます。例えば、年末にインプラント治療を始めたものの、支払ったタイミングが年を明けて空になる場合は、その年の医療費に含めることはできません。
翌年の医療費として申請することになるので、治療の支払日が対象になることも、覚えておきましょう。
領収書を失くさないよう保管しておく必要がある
インプラント治療の医療費控除では、歯科医院の窓口で渡される領収書や明細書を保管しておかなくてはいけません。クレジットカードで支払った場合はカードの明細書を印刷しておき、一緒に提出できるように準備をしておきます。万が一、領収書をなくしてしまった場合は、治療を受けた医療機関に申し出ると「支払証明書」を発行できる可能性があります。ただし、発行には手数料がかかることも覚えておきましょう。
会社員の場合でも自身で申告をする必要がある
会社員の多くは、年末に会社にて年末調整を行っているため安心してしまっている人もいると思います。インプラント治療に関わらず、医療費控除は年末調整の対象外となります。医療費控除を受けるためには、自ら申告しなくてはいけないため、手続きを忘れると受けられなくなってしまいます。金額の間違いがないように、自身で申告するようにしてください。
インプラント治療の医療費控除に関するよくある質問(Q&A)
インプラント治療の医療費控除に関するよくある質問をQ&A方式で解説します。
Q1:デンタルローン・クレジットカード利用でも申請できる?
デンタルローンやクレジットカード利用も申請できます。
ただし、ローンを借りた歳やクレジットカードで分割払いをした際の金利は控除の対象外となります。
Q2:治療を受けた家族の医療費も申請できる?
治療を受けた生計をともにしている家族がいれば、一緒に医療費を申請できます。ただし、夫婦共働きの場合は所得が高いほうが申請をしたほうが節税効果が高くなるためおすすめです。
Q3:前年度の医療費控除の申告を忘れてしまったら?
医療費控除の申請は、5年前までさかのぼって申請できます。ただし、この5年間を通算できるわけではなくそれぞれ1年間の1/1〜12/31の医療費が10万円を超えていることが条件となります。
Q4:年金受給者でも医療費控除を受けられる?
年金受給者も医療費控除を申請できます。これは、年金受給者の年金から源泉徴収が引かれているためです。年金による所得が100万円の場合であり、医療費が5万円以上であれば医療費控除の対象となります。
Q5:高額療養費と医療費控除は併用できる?
医療費控除と高額療養費の併用は可能です。医療費控除は税務署に申告書を提出し、高額療養費は加入先の医療保険者へ申請を提出します。また、高額療養費の対象となるのは、保険適用の医療費のみです。
まとめ
インプラント治療の医療費控除は、治療費を支払った日の翌年に申告する必要があります。インプラント治療は高額な費用がかかるものだからこそ、忘れずに申告するようにしてください。支払った方法や、期間を過ぎてしまうと申請ができなくなってしまいます。年金受給者であっても高額療養費を請求していても医療費控除を申請できることも覚えておきましょう。